『頂き女子』とは、なんだったのか

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『頂き女子』は、2020年代初頭にSNSで注目された日本の社会現象で、男性から金銭をだまし取る行為を指すスラングだ。中心人物の「頂き女子りりちゃん」こと渡邊(渡辺)真衣さんは、男性から約1億5000万円をだまし取ったほか、手口を記した「マニュアル」を販売したとして、詐欺罪などに問われ、2025年1月、最高裁が上告を棄却する決定をし、懲役8年6か月・罰金800万円の実刑が確定した(2025年1月14日付の決定、16日に報道)。『頂き女子』とは何だったのか。その誕生から全盛期、衰退までを振り返る。

『頂き女子』の誕生と背景

『頂き女子』の起源は、2021年頃に遡る。渡辺真衣(当時22歳)がTwitter(現X)で「頂き女子りりちゃん」を名乗り、「おぢ」と呼ぶ中年男性から金銭を「頂く」行為を公言したのが始まりだ。
彼女は、貧困や借金を理由に同情を誘い、恋愛感情を煽るメッセージでターゲットを操った。
元々ホストクラブに通う生活を送っており、その資金を得る手段としてこの行為を始めたとされる。

この現象は、パパ活やギャラ飲みとは異なり、「対価のない金銭授受」が特徴だった。
パパ活がデートや時間を対価とするのに対し、頂き女子は会うことなく、オンラインでのやり取りだけで金を引き出した。
渡辺は「魔法のマニュアル」を作成し、1セット3万円で約1000人に販売。
マニュアルには、「病み営業」や「夢に出てきたよ」といった言葉で男性を惹きつける手法が詳細に記されていた。

背景には、コロナ禍での経済的困窮とSNSの普及がある。
若い女性が直接会うリスクを避け、オンラインで稼ぐ手段として頂き行為が広がった。
渡辺自身、「ホストに月1000万円渡すため」と動機を語り(東海テレビ『ドまんなか!』2024年9月27日放送)、幼少期の愛情不足も影響したと明かした。

全盛期:頂き女子ブームの拡大

『頂き女子』の全盛期は、2022年から2023年だ。
渡辺の活動がピークを迎え、被害総額は1億5500万円に達した。
彼女は3人の男性を主なターゲットにし、「生活費がない」「借金で困っている」と嘘をつき、時には一人二役を演じて金を引き出した。
被害者の中には生命保険を解約して全財産を渡した人もいた(名古屋地裁2024年4月判決)。

マニュアルも販売され、購入者が同様の手口で男性から現金をだまし取ったとして起訴された事件もあり、影響は模倣にも広がった。2023年8月、渡邊被告は詐欺容疑で逮捕された。

メディアも注目し、テレビ東京『じっくり聞いタロウ』(2021年11月11日放送)では「コロナ禍で増殖する頂き女子」として特集。
裏社会ジャーナリストが「古典的手口がSNSでブーストされた」と分析した。頂き女子は一時、若者の間で「賢い稼ぎ方」とさえ見なされた。

全盛期の特徴と手法

頂き女子の全盛期には、明確な特徴があった。

恋愛感情の搾取

頂き女子は、ターゲットの恋愛感情を利用する点で際立っていた。
出会い系アプリやSNSで中年独身男性に接触し、「彼女」として信頼を築いた後、金銭を要求。
渡辺は「一緒に住めたらいいね」などの甘い言葉で心理を操作した。

マニュアルの普及

「魔法のマニュアル」は頂き女子のバイブルだった。
男性心理を分析し、「病んだフリ」や「感謝の過剰演出」を指南。
購入者はこれを実践し、全国で被害が拡大した。
渡辺はマニュアル販売で約2000万円を稼ぎ、詐欺ほう助罪の根拠となった(NHK2024年4月22日)。

ホストとの結びつき

頂き女子の多くは、ホストクラブに貢ぐために活動していたとされる。渡邊被告についても、詐取した金の多くをホストクラブなどに使っていたと報じられている。

衰退と法的な終焉

2023年8月の逮捕を機に、頂き女子ブームは衰退した。
渡辺は詐欺罪と詐欺ほう助罪で起訴され、2024年4月、名古屋地裁で懲役9年・罰金800万円の判決を受けた。
裁判長は「男性心理を手玉に取る狡猾な犯行」と非難(NHK2024年4月22日)。

被告側が控訴したが、2024年9月、名古屋高裁は懲役8年6か月に減刑。
ホストからの一部弁済が考慮された(NHK2024年9月30日)。
2025年1月16日、最高裁が上告を退け、実刑が確定した。

関連する事件の裁判も続き、マニュアルを使った模倣者も摘発された。

社会的な批判と法の網が、現象を収束させた。

まとめ:『頂き女子』の時代とその終焉

『頂き女子』は、2021年ごろからSNSを舞台に広がった現象だった。渡邊真衣さんの「りりちゃん」名義の活動が注目を集め、恋愛感情を利用した詐欺とマニュアル販売で被害が広がったが、2023年8月の逮捕と、2025年1月の実刑確定で、法的には一つの区切りを迎えた。

『頂き女子』とは、巧妙な詐欺であり、時代の産物であり、そして人間の欲望を映す鏡だった。
振り返ると、デジタル社会の光と影がそこにある。

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