中国の「ハイヒールおじさん」とは何者?自らハイヒールを履いて売る中年男性の正体と成功の裏側【2026年9月12日更新】

エンタメ・人物

中国のSNSや動画サイトで、女性用のハイヒールを自分で履いて走ったり歩いたりしながら売っている中年男性を見かけたことはないだろうか。がっしりした男性の足に細いピンヒール、という強烈なビジュアルのギャップから、日本でも「ハイヒールおじさん」として話題になった人物がいる。

この記事では、彼が何者なのか、なぜこんな売り方をするようになったのか、そして今どうなっているのかを、中国メディアの報道をもとに整理する。

2026年9月には、お笑いコンビ「チョコレートプラネット」の松尾駿さんが実際に白いハイヒールを履いて歩く動画をSNSに投稿したことでも話題になった。松尾駿さん自身について詳しく知りたい人は、先にこちらの記事を見てもらってもいい。

「ハイヒールおじさん」の正体は靴の通販業者・吴楠(ウー・ナン)さん

話題の中心人物は、中国四川省出身の吴楠(呉楠)さん。中国メディアの取材によれば、身長170cm、体重は約64kg、足のサイズは女性用でいう39码(日本サイズで24cm前後)というごく普通の体格の男性だ。

大学ではコンピューター系の学科を専攻しており、もともとファッションや靴の専門家だったわけではない。2008年、地元・成都で女性靴のネット販売を始めたのが、彼と「靴」との最初の接点だった。

自身のブランド「吴大叔WUDASHU(ウーダーシュー)」を運営しており、「吴大叔」は中国語で「呉おじさん」ほどの意味になる。

十数年に及ぶ失敗の連続からのスタートだった

「ハイヒールを履いて走る中年男性」という一発ネタのように見えるが、彼の経歴を追うと、決して一夜にして成功したわけではないことが分かる。

中国メディアの報道を総合すると、おおよそ次のような経緯をたどっている。

  • 2008年、成都で女性靴のネット通販を開業。本人いわく「地元で最初期のネット通販業者の一人」だった
  • 開業から数年で、管理体制が追いつかないまま事業を拡大しすぎて経営が行き詰まり、大量の在庫を抱えて処分
  • その後も女性靴での再起業に挑戦するが失敗
  • 拠点を浙江省台州に移し、ネットショップで年商7000万〜8000万元(当時のレートで十数億円規模)まで伸ばすものの、再び管理面の問題で店をたたむことに
  • 2018年、地元・成都に戻り、自社ブランドの立ち上げを決意

つまり彼は、2008年から10年以上にわたって女性靴の通販業に携わりながら、複数回の失敗を重ねてきた「靴業界のベテラン」だったことになる。

きっかけは知人の何気ない一言だった

自らハイヒールを履くようになったのは、2018年に自社ブランドを立ち上げたタイミングだった。中国メディアの取材に対し、吴さんはそのきっかけをこう振り返っている。

知人から「ショート動画では、男性がハイヒールを履くと再生数が伸びやすい」と聞き、たまたま自分の足のサイズが女性用ハイヒールに合うことに気づいたのがきっかけだったという。当初は完全に「アクセスを稼ぐための施策」として、話題作りのつもりで始めたようだ。

最初に投稿した、ハイヒールで転んでしまう動画が中国版TikTok「抖音(Douyin)」で5万回再生を獲得したことから、この路線を本格的なコンテンツの軸に据えるようになった。以降はオフィス、公園、ランニングコース、トレッドミル(ランニングマシン)など、あらゆる場所でハイヒールのまま走ったり歩いたりする動画を継続的に発信している。ちなみに、ハイヒールと合わせるボトムスは「七分丈のフレアジーンズ」が一番しっくりくると、本人なりに研究を重ねているそうだ。

なぜここまで話題になったのか

中国メディアの分析では、「中年男性が、女性用ハイヒールを自分で履いて商売をする」という強いギャップこそが拡散の原動力になったとされている。

似たような「男性が女性向けアイテムを身につけて販売する」形式の動画は、性別のイメージのギャップを強調しすぎるとかえって視聴者に違和感を与えやすいジャンルでもある。しかし吴さんの動画は、体のラインやしぐさを強調するのではなく、あくまで靴そのものの履き心地や見た目に視線が向くような見せ方を意識しているとされ、それが不快感を与えずに好意的な拡散につながったと分析されている。

実際、中国のネット上では「このおじさんの足の方が、女性より綺麗に見える」といった好意的なコメントも紹介されている。今回調べた範囲では、彼の商売のやり方そのものに対する大きな批判や炎上といった報道は見つからなかった。

日本では2023年2月、海外ニュースまとめサイト「カラパイア」が英語圏メディアの報道をもとにこの人物を紹介しており、これが国内での認知が広がったきっかけの一つとみられる。当時の記事では「フォロワー120万人以上、月間売上高は約600万元(当時のレートで約1億1400万円)」と紹介されており、日本のネットユーザーからは「ゴツい男性の足でも綺麗に見えるなら、それだけ靴の質が良い証拠」「イケメンモデルではないところに逆に説得力がある」といった好意的な反応が多く見られたという。

「海外発のSNSトレンドが、強烈なビジュアルギャップとともに日本でも話題になる」というパターンは、吴さんに限った話ではない。084deepsでは他にも、似た形で話題になった海外発の人物を取り上げている。

一発ネタで終わらず、本業として拡大を続けている

ここまでなら「バズった中国の面白動画」で終わりそうなところだが、吴さんのケースが興味深いのは、その後もブランドとして着実に事業を拡大している点だ。

中国メディアの報道によると、売上やフォロワー数はプラットフォームや集計時点によって数字にばらつきがあるものの、おおむね次のように推移してきたとされている。

時期報じられている内容
2021年淘宝(タオバオ)店のフォロワー17万人、複数プラットフォーム合計の年間販売額が1.2億元超
2023年全プラットフォーム合計のフォロワーが約400万人に。抖音の女性靴店舗ランキングで年間1位を獲得
2024年抖音単体の年間流通額(GMV)が3億元を突破。京東(JD.com)にも出店
2025年新シリーズが累計24万足以上を販売し、抖音のハイヒールカテゴリーでトップに

さらに2025年以降は、靴底に衝撃吸収用のクッションと反発素材を組み込んだ独自構造について中国国内の特許を取得したと発表しており、外部の調査機関からも「エアクッション緩衝ハイヒールの先駆者」として認証を受けたとしている。単なる話題作りの企画から始まったコンテンツが、「痛くて疲れる」という女性用ハイヒールの根本的な悩みを解決する製品開発にまでつながっているのは、率直に興味深い展開だ。

なお、事業拡大の経緯や具体的な負債額など、一部の情報は情報源によって数字や時期の区切り方が異なっており、正確な最新の売上・フォロワー数については本人や企業の最新発表を確認する必要がある点は留意しておきたい。

日本での反響:チョコレートプラネット・松尾駿さんが本人を再現

ハイヒールおじさんの動画は日本のSNS上でもたびたび話題になっており、X(旧Twitter)では「中国の『ハイヒールおじさん』を、チョコプラの松尾が一日も早く見つけてくれますように」「ハイヒールおじさんが、チョコプラの松尾さんに見えてきた」といった投稿が2026年9月上旬から広がっていた。お笑いコンビ「チョコレートプラネット」の松尾駿さんは、IKKOさんのものまねなどで女性用ハイヒールを履いて演じることがあり、そのイメージと重ねてファンから「真似してほしい」という声が寄せられていた形だ。

その後、相方の長田庄平さんが自身のInstagramに、松尾駿さんが実際に白いハイヒールを履いて都内の路上を歩く動画をリール投稿している。

動画では、松尾駿さんが白いパンツスーツ姿に白いハイヒールを合わせ、街路樹の並ぶ歩道を颯爽と歩く様子が収められている。投稿の詳しい撮影経緯(テレビ番組の企画か、SNS向けの自主制作かなど)を説明する公式なコメントは確認できなかったが、ファンから寄せられていた「モノマネしてほしい」というリクエストに応える形の投稿とみられる。松尾駿さん自身のプロフィールやものまねレパートリーは、記事冒頭で紹介した関連記事も参考にしてほしい。

女性用ハイヒールが「見た目は良いが痛い・疲れる」と言われがちなのは、吴さんが解決しようとしている課題そのものだ。すでにハイヒールを持っている人であれば、つま先やかかとに貼るタイプのジェルクッションを併用するだけでも、履き心地はかなり変わってくる。

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まとめ

中国の「ハイヒールおじさん」こと吴楠さんは、10年以上にわたる複数回の事業失敗の末、話題作りのために自らハイヒールを履いたことがきっかけで注目を集めるようになった人物だった。単なるバズり動画で終わらせず、そこからブランドを立ち上げ、独自技術の特許取得まで進めている点は、一発ネタの裏にある地道な下積みと、その後の本気の事業展開の両方が見えて興味深い。

数字は情報源によって幅があるものの、中国国内でハイヒールというジャンルの中でトップクラスの実績を持つブランドに成長していることは、複数のメディア報道から確認できる。今後も彼がどんな新商品や新しい見せ方で話題を作っていくのか、注目してみたい。

日本では、お笑いコンビ・チョコレートプラネットの松尾駿さんが実際にハイヒールを履いて再現する動画をSNSに投稿するなど、思わぬ形で話題が飛び火した。中国発のバズ動画が、日本の芸能人による「モノマネ」というかたちで別の広がり方をした例としても興味深い。

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