「減税メガネ」の愛称で知られる東京都議会議員、さとうさおり(佐藤沙織里)氏が、2026年9月14日に議員辞職した。実はこれが初めての辞職表明ではない。8月29日に一度辞職の意向を公表したものの9月4日に撤回し、その10日後にあらためて辞職を発表するという、異例の展開をたどっている。
この記事では、さとうさおり氏がどんな人物なのか、なぜ都議として注目されたのか、そして辞職までに何があったのかを、公式発表や報道をもとに時系列で整理する。
さとうさおりとはどんな人物か
さとうさおり氏は1989年7月28日生まれ、茨城県出身。公認会計士・税理士の資格を持ち、2020年9月に自身の会計事務所を設立している。高校卒業後、働きながら専門学校に通い、26歳で公認会計士資格を取得。大手監査法人でキャリアを積んだという経歴の持ち主だ。
2023年頃から、YouTubeチャンネルで税金や財政に関する情報発信を本格化。「徹底した減税」を掲げる政策姿勢から「減税メガネ」の愛称で呼ばれるようになった。2025年6月の東京都議会議員選挙で、千代田区選挙区(定数1)から無所属で出馬し、初当選している。
都議として何を追及してきたのか
さとう氏が都議として注目を集めた大きな理由が、公認会計士としての専門知識を活かした追及活動だ。
なかでも大きな話題になったのが、東京都の「都営住宅等事業会計」における消費税未申告問題だ。2002年度から2022年度までの21年間分、消費税が申告されていなかったことを指摘。都は担当の税理士法人から過年度分についても申告義務があると指摘を受けていたにもかかわらず、期限後申告を行っていなかったとして、2025年10月2日の一般質問でこの問題を追及した。
このほかにも、議会の事前意向確認慣行や天下り問題、都立病院の個人未収金、宿泊税、機密情報の不正アクセス漏洩事案などを取り上げており、これらの追及によって都職員14人が懲戒処分を受けたとされる。
辞職までの経緯
さとう氏の辞職を巡る動きは、短期間で二転三転している。時系列で整理すると次の通りだ。
| 時期 | 出来事 |
|---|---|
| 2025年6月 | 東京都議選で千代田区選挙区から初当選(無所属) |
| 2025年10月2日 | 一般質問で都の消費税未申告問題(21年分)を追及、大きな話題に |
| 2026年8月29日 | YouTubeで議員辞職の意向を公表。「今後の人生に大きく関わる事情が重なった」と説明 |
| 2026年8月31日 | 「秘書が取材に対応した」とする報道に対し、本人がXで否定 |
| 2026年9月4日 | YouTubeで辞職撤回を発表。「身近な人への暴行」「大切な人への金銭的要求」があったと説明 |
| 2026年9月14日 | 再び辞職を表明し、都議会に辞職願を提出。議長が許可し正式に辞職 |
最初の辞職表明(8月29日)
2026年8月29日17時24分、さとう氏は自身のYouTubeチャンネルに約5分12秒の動画を投稿し、議員辞職の意向を公表した。
動画の中で氏は「今後の人生に大きく関わる事情が重なった。命を優先し、今を生きる活動に入る」と説明。詳しい事情については「私だけにかかわる部分ではない部分もある」として、具体的な内容の公表を控えた。支援者に対しては「任期途中でこのような報告をすることになり心よりおわびする」と謝罪する一方、「日本を変える活動は政治家だけでなく一民間人の立場でもやれる」とも述べ、議員を辞めたあとも活動を続ける意思を示していた。
辞職の撤回(9月4日)
ところが1週間後の9月4日、さとう氏はYouTubeで一転して辞職の撤回を発表した。
この動画で氏は、辞職を考えた理由として「私の身近な人に暴行があった。そしてそれとは別に、私の大切な人に対する金銭的な要求があった」と説明。相手が誰なのか、具体的な内容や発生時期、警察への届け出の有無などは公表されていない。
撤回のきっかけは、複数の政界関係者からの働きかけだったという。氏は「どうやら解決できる道筋がありそうだ」として、「悩んで悩んで悩みに悩んだ末」に議員継続を選んだと説明している。この時点ですでに会派室の撤収や貸与品の返却まで進んでいたとされ、活動再開は実質的にゼロからの再スタートに近い状況だったようだ。
再度の辞職(9月14日)
さらに10日後の9月14日、さとう氏は再び議員辞職を発表した。動画は病室のような場所で撮影されており、氏は「その道筋は幻のようなもので、現実と向き合う中で」継続が難しいと判断したと説明した。
「自分が今まで行っていた仕事も手放しました。今まで住んでいた家も手放しました。本当にゼロになっている状況です」「今あるものは数個のキャリーケースと自分の体だけ」と、現在の状況を語っている。議員辞職の決断については「不正解だと思います」としながらも、「無意味だとは思っていません」とも述べ、政治への情熱は失っていないと強調した。
同日、さとう氏は東京都議会の増子博樹議長宛てに辞職願を提出。議長がこれを許可し、正式に辞職が確定した。都議の辞職は本人の届け出だけで成立するのではなく、閉会中は議長の許可、開会中は本会議の議決が必要な手続きで、今回は議長許可というかたちで処理された。今後、千代田区選挙区で補欠選挙が実施される見通しだ。
なお、「身近な人への暴行」「金銭的要求」の詳細については、2026年9月14日時点でも本人からの説明はなく、確認できていない。
YouTube収益化を巡る批判
今回の辞職劇では、発表方法そのものにも批判が集まっている。
争点になっているのは、議員辞職という重大発表を、登録者数約58万人規模のYouTubeチャンネルで行っていること自体に、広告収益が発生する構造への疑問があることだ。加えて、2025年10月に政務活動費を使って開催した報告会の映像をチャンネルに投稿し、収益化していたとされる点についても、都議会側から「税金を充てた活動を個人の収益化に利用しているのではないか」との指摘が出ている。これに対し、さとう氏は「法的根拠がない」と反論している。
世間の反応
ネット上の反応は割れている。
批判的な意見としては、「またか」「インプレッション稼ぎではないか」といった声が目立ち、短期間での方針転換に元支持者からも失望の声が上がっている。
一方で、消費税未申告問題の追及など都政における実績を評価する声や、「暴行や金銭要求が事実であれば、辞職は自己防衛として理解できる」として本人を擁護する意見も見られる。
いずれも現時点ではSNS上での反応であり、世論全体を代表するものではない点には注意しておきたい。
まとめ
さとうさおり氏は、公認会計士としての専門性を武器に都の消費税未申告問題などを追及してきた新人都議だった。しかし就任からおよそ1年強で、辞職表明・撤回・再辞職という異例の展開をたどり、2026年9月14日に正式に辞職している。
辞職理由として語られている「身近な人への暴行」「金銭的要求」の詳細は本人非公表のままで、確認できていない部分も多い。今後、千代田区選挙区での補欠選挙や、本人が「一民間人として」続けるとしている活動がどうなっていくのか、続報を注視したい。


