配信活動を仕事にしている人の間で、「配信者は賃貸物件を借りにくい」という話をたびたび見かける。実際にネット上には、配信者・ライバー・YouTuber向けをうたう賃貸仲介サービスまで存在している。
なぜ配信者は賃貸で苦労しやすいと言われるのか。審査を通すためにはどんな対策があるのか。そして、実際に起きている騒音トラブルや住所特定のリスクはどう扱われているのか。不動産会社や弁護士の解説をもとに整理した。
配信者は本当に賃貸を借りにくいのか
結論から言うと、「配信者だから絶対に借りられない」ということはない。ただし、会社員に比べると審査のハードルが上がりやすいのは事実のようだ。
複数の不動産会社が、配信者・ライバー・YouTuber向けの審査サポートを専門メニューとして用意している。専門サービスが成立するほど、業界的にも「配信者は審査で苦労しやすい」という認識が広がっていると考えられる。

なぜ賃貸審査に通りにくいと言われるのか
不動産会社の解説記事では、主に3つの理由が挙げられている。
収入が不安定とみなされやすい
配信者の多くは個人事業主にあたる。月々の収入が、登録者数・再生回数・投げ銭の額によって大きく変動しやすいため、たとえ月収が高くても「継続的に家賃を払い続けられるか」という観点で厳しく見られやすい。
会社員であれば「勤続年数」や「給与明細」で安定性を示せるが、配信者の場合はそれに代わる材料を自分で用意する必要がある。
深夜配信などによる騒音トラブルへの懸念
ゲーム実況の大声、キーボードやコントローラーの操作音、複数人での通話配信などが、近隣トラブルにつながるのではという懸念を持たれやすい。特に深夜帯の配信は、木造・軽量鉄骨造のアパートでは音が響きやすく、警戒されるポイントになっている。

「配信業」という職業への理解が薄い
特に年配のオーナー層にとって、配信業は収入の仕組みや実態が分かりにくい職業だ。「何をしている人か分からない」という漠然とした不安が、審査でのマイナス材料になりやすいとされる。
審査を通すためにできる対策
不動産会社が挙げている対策を整理すると、以下のようになる。
| 対策 | 内容 |
|---|---|
| 家賃の目安を抑える | 月収の4〜5分の1程度に設定(会社員向けの「3分の1」目安より厳しめ) |
| 独立系保証会社を選ぶ | 信販系保証会社より審査が柔軟とされる |
| 開業から一定期間待つ | 確定申告2期分など、収入証明を出せる状態にしてから申し込む |
| 納税証明書・確定申告書を準備 | 確定申告書B(受領印付き)や課税証明書など |
| 預貯金をアピール材料にする | 家賃の12〜24か月分程度の貯蓄があると安心材料になりやすい |
| 事務所に所属する | 企業案件などで収入の安定性を説明しやすくなる |
もう一つ有効とされているのが、「活動説明書」を用意して仲介会社と一緒にオーナーを説得するアプローチだ。チャンネルの実態、収益の安定性、防音対策への意識などを事前に説明することで、オーナー側の漠然とした不安を先回りして解消できるという。
逆に絶対にやってはいけないのが、職業を偽って申し込むことだ。SNSなどで発覚した場合、その場で審査落ちになるだけでなく、管理会社に「虚偽申告をした人物」として記録が残り、その後の審査にも影響しかねないとされている。
税務調査の話とあわせて考えると、配信者は「個人事業主であること」自体が、税務・住居の両方で会社員とは違うハードルになりやすい立場だと言えそうだ。
配信者向けの賃貸サービスも登場している
こうした状況を受けて、配信者・ゲーマー・リモートワーカーに特化した賃貸仲介サービスも生まれている。防音性能や回線速度を事前にチェックした物件を紹介し、不動産会社への説明に不慣れな配信者に代わって、審査までのやり取りをサポートするのが特徴だ。
大手不動産会社側の動きも出てきている。天井に撮影用のスポットライトやバーチャル背景用のレールを設置した住戸、大型機材を運びやすい大きめのエレベーターを備えた物件などが登場し、配信者向け住戸が短期間で満室になった例も報告されている。こうした物件は防音性能や高速回線を売りにしているぶん、周辺相場より家賃が3割ほど高い水準でも需要があるという。

実際に起きている騒音トラブル、法的にはどうなるのか
配信者の騒音をめぐるトラブルは、まとめサイトやネットニュースでたびたび取り上げられている。深夜配信を理由に管理会社から注意を受けたケースや、住んでいるマンションに騒音への注意喚起の張り紙が出されたことを配信内で明かしたケースなどが報じられている。
ただし、こうした個別の事例の多くは当事者本人による一次情報までは確認できず、まとめサイト経由の情報にとどまる。本記事では、そうした事例が「報じられている」という扱いにとどめ、断定はしない。
法律の観点では、弁護士監修のメディアで次のように整理されている。
- 騒音が民法709条の不法行為にあたる場合、「差し止め」と「損害賠償」を請求できる可能性がある。一般的には損害賠償請求のほうが認められやすい。
- 不法行為が成立するには、音の程度・継続時間・防止策の有無などを踏まえて「受忍限度」を超えていると判断される必要がある。
- 騒音を理由とした強制退去は、法的には認められていない。ただし受忍限度超過が認定されれば、配信者側がその後の請求を避けるために自主的に退去するケースは考えられるという。
つまり「うるさい配信者は即退去させられる」というほど単純な話ではないが、損害賠償リスクは現実にあるということになる。
また、賃貸物件を居住目的以外(撮影スタジオ・事務所など)として使うことは契約上原則NGとされており、発覚すれば契約解除の対象になり得る。配信・撮影活動そのものを禁止する条項を設けている物件も増えているとされるため、契約書の確認は欠かせない。
住所が特定されるリスクと対策
配信者にとってもう一つの懸念が、自宅住所を特定されるリスクだ。特定の仕組みとしては、次のようなものが挙げられている。
- 配信中の大声や会話内容が隣室に漏れ、それを聞いた人物から住所が推測される
- 配信画面に映り込む窓の外の景色や、周辺の建物・目印から住所が割り出される
人気が上がるほど、こうしたリスクは高まるとされる。対策としては、以下のような方法がある。
- 鉄筋コンクリート造・分譲賃貸タイプなど、防音性の高い物件を選ぶ
- 配信中の声量や映り込みに気を配る
- 芸能事務所・配信者事務所に所属し、配信スペースを提供してもらう(ファンレターの宛先も事務所住所にできる)
- 配信用スペースを時間貸しでレンタルする(ただしファンレター受取用には使えず、都度費用がかかる)
- バーチャルオフィスで「住所だけ」を借りる(月額数千円程度〜。配信・居住用途には使えないが、ファンレターなどの受取先として利用できる)
いずれも一長一短があるため、自分の活動規模や予算に合わせて選ぶ必要がありそうだ。
まとめ
配信者が賃貸で苦労しやすいと言われる背景には、「収入の不安定さ」「騒音への懸念」「職業への理解不足」という3つの要因がある。これに対しては、書類の準備や保証会社選び、活動内容の説明といった実務的な対策があり、配信者向けの専門サービスも登場している。
騒音トラブルについては、法的に即座の強制退去にはつながりにくいものの、損害賠償のリスクはある。住所特定についても、配信者だから起きるというより、音や映像から推測されるという構造的な問題であり、対策次第でリスクを下げられる部分は大きい。
これから部屋を借りようとしている配信者にとっては、「何となく厳しいらしい」で終わらせず、必要書類や物件選びのポイントを事前に押さえておくことが、遠回りに見えて一番の近道になりそうだ。
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