Kickの投げ銭・ギフトは視聴者側にも税金がかかるのか

1万円札と電卓、積み上げられたコイン KICK

Kickで気に入った配信者に投げ銭(チップ)を送ったことがある人、あるいはこれから送ってみようか迷っている人の中には、「これって自分に何か税金がかかったりしないよね?」と気になったことがある人もいるのではないだろうか。特に「投げ銭は贈与だから、高額だと贈与税がかかるのでは」という話を聞いたことがある人もいるかもしれない。

結論から言うと、視聴者として投げ銭を送る側に、贈与税も所得税もかかることは制度上ない。この記事では、なぜそう言えるのかを国税庁の公式情報をもとに整理する。あわせて、受け取る配信者側の税金の扱いや、消費税がどう関係するのかについても触れていく。

1万円札と電卓、積み上げられたコイン

「投げ銭は贈与だから贈与税がかかる」は視聴者には当てはまらない

まず整理しておきたいのが、贈与税という税金は誰にかかるものなのか、という点だ。

国税庁の説明によると、贈与税は財産をもらった人(受贈者)に課される税金であり、財産をあげた人(贈与者)には贈与税の納税義務は発生しない。

> 出典:国税庁 No.4405「贈与税がかからない場合」

これは投げ銭に限った話ではなく、贈与税という制度そのものの基本構造だ。つまり、仮に投げ銭が法律上「贈与」に当たると判断されたとしても、税金を負担する可能性があるのは受け取った配信者側であって、送った視聴者側ではない。「高額の投げ銭を送ると自分に贈与税がかかるかもしれない」という心配は、そもそも制度上あり得ないことになる。

そもそも投げ銭は「贈与」ではなく「サービスの対価」として扱われることが多い

もう一つ知っておきたいのが、投げ銭やスーパーチャットは、税務上そもそも「贈与」として扱われないことが多い、という点だ。

複数の税理士事務所の解説記事では、投げ銭について次のような考え方が示されている。

  • 投げ銭は「ファンからの贈り物」という体裁を取っているが、不特定多数の視聴者から、配信というサービス(役務提供)への対価として支払われるという性質が強い
  • そのため、受け取った配信者側では贈与税ではなく、所得税(事業所得または雑所得)の対象になると考えられる

> 出典:ソリマチ株式会社「「投げ銭」はファンからの贈り物?「投げ銭」に関する税金の取扱いを解説。」、小谷野税理士法人「投げ銭はどんな税金がかかる?」、マネーの達人「スパチャで「高額ご祝儀」に贈与税は課税されるのか」

つまり、視聴者側から見れば「応援のつもりで送ったお金」でも、税務上は配信を見る・応援するという体験に対する支払いに近いものとして扱われる。だからこそ受け取る配信者側には所得税の申告義務が生じる、という理屈になっている。

このあたりの事情は、Kick配信者への税務調査が話題になった別の記事でも詳しく触れているので、受け取る側の税金がどう扱われているか気になる人はあわせて読んでみてほしい。

視聴者が投げ銭を送ったことで確定申告が必要になることはあるか

結論としては、通常の個人視聴者が投げ銭を送ったこと自体で確定申告が必要になることはない。

確定申告が必要になるのは「収入を得た人」であり、投げ銭を送る行為は視聴者にとって収入ではなく、娯楽・応援のための個人的な支出(消費)にあたる。会社の経費として計上するような特殊な事業性がある場合を除けば、投げ銭を送ったことをきっかけに税務署に何か申告する義務が発生することはない。

ノートパソコンの横に置かれた確定申告書類と電卓

消費税はどうなっているのか

もう一つ気になるのが消費税だ。Kickはオーストラリアの企業が運営する海外発のプラットフォームなので、「海外のサービスに課金したら消費税はどう扱われるのか」と疑問に思う人もいるだろう。

この点については、「国境を越えた電気通信利用役務の提供」という国税庁の制度が関係してくる。日本の消費者向け(いわゆるB2C)のインターネットサービスについては、原則として海外の事業者側が日本の消費税を申告・納税する義務を負う仕組みになっている(事業者同士の取引の場合は「リバースチャージ方式」という別の仕組みが適用されるが、これは通常の個人視聴者には関係しない)。

> 出典:国税庁「国境を越えた役務の提供に係る消費税の課税関係について」、国税庁 No.6118「国境を越えた役務の提供に係る消費税の課税関係」

つまり、制度の建て付けとしては、消費税の申告・納税はサービスを提供する事業者(プラットフォーム)側の役割であり、視聴者が投げ銭やチップの利用にあたって自分で何か消費税の手続きをする必要は基本的にない。

ただし、Kickというプラットフォーム自身が、日本向けにこの消費税をどのように扱っているか(価格に含めているかどうかなど)を明言した公式情報は、私が調べた範囲では見つからなかった。この点は「一般的な制度としてはこうなっている」という説明にとどめ、Kickに固有の話として断定はしない。

受け取る配信者側の税金は?

視聴者側には基本的に税金の心配がないと分かったところで、逆に「じゃあ配信者側は投げ銭にどう税金がかかっているのか」も気になる人がいるかもしれない。

簡単に言うと、配信者が受け取った投げ銭は、事業として継続的に配信を行っているかどうかなどによって「事業所得」または「雑所得」に区分され、一定額を超えると確定申告が必要になる。「ファンからの贈り物だから税金は関係ない」という考え方は、税務上は通用しにくいということになる。

実際、Kickで活動する配信者に税務調査が入ったという話がX上で話題になったこともあった。その具体的な内容や、配信者・インフルエンサーがなぜ税務調査を受けやすいのかについては、別記事で詳しく整理しているので、配信者側の視点が気になる人はそちらも参考にしてほしい。

ノートパソコンとスマートフォンを操作する手元とデスク

まとめ

Kickなどの配信で投げ銭・チップを送る視聴者に、贈与税や所得税がかかることは制度上ない。贈与税はそもそも「もらった側」に課される税金であり、投げ銭自体も税務上は「サービスの対価」として扱われることが多い。消費税についても、海外プラットフォームへの課金である以上、申告・納税の役割を負うのは基本的に事業者側であり、視聴者が個別に手続きをする必要は基本的にない。

一方で、受け取る配信者側は事業所得・雑所得として確定申告の対象になる可能性がある。「応援のつもりで送ったお金だから税金は関係ない」というのは、あくまで視聴者側の話であり、受け取る側には別のルールが働いている、という点は覚えておくとよさそうだ。

なお、この記事は一般的な税制の説明であり、個別の税務相談や税務判断の代わりになるものではない。金額が大きい場合や事業性がある特殊な事情がある場合は、税理士など専門家に相談することをおすすめする。

投げ銭を受け取る配信者側は、確定申告が必要になるケースがある。専門用語が苦手な人でも読み進めやすい、やさしい解説本があると準備の第一歩を踏み出しやすい。

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