フジテレビの元専務として知られる大多亮氏(66歳)。彼の名前が最近メディアで注目されるようになったのは、2025年1月に表面化した中居正広氏の女性トラブル問題への対応が第三者委員会から厳しく指摘され、関西テレビ社長を辞任したことが大きい。しかし、大多氏のキャリアを振り返れば、1980-1990年代のフジテレビ黄金期を支えたトレンディドラマの帝王として、テレビ史に残る功績を残した人物だ。今回は、そんな大多氏の生い立ちから経歴、功績、そしてスキャンダルや辞任の経緯までをまとめてみた。
基本プロフィールと生い立ち
大多亮氏(本名:大多亮、1958年11月3日生まれ)は、東京都台東区浅草出身。早稲田実業学校高等部を卒業後、早稲田大学教育学部に入学。大学時代は教育学を学び、後のドラマ制作で活かされる人間心理やストーリーテリングの基盤を築いたとされる。同期には小室哲哉氏がおり、親交が続き、ドラマの音楽制作でコラボレーションしたこともある。血液型や身長などの詳細は非公表だが、若い頃の写真ではシャープな顔立ちで知的な印象を与える。大学卒業後、1981年4月にフジテレビジョンに入社。入社当初は報道局に配属され、社会部記者として警視庁キャップなどを担当。現場叩き上げの経験が、後のリアリティあふれるドラマ制作に影響を与えた。同期には山中秀樹氏や鈴木克明氏らがおり、フジの80年組として黄金期を支える人材を輩出した。
フジテレビでの経歴:報道からドラマの帝王へ
大多氏のキャリアは、フジテレビの多様な変遷を象徴している。報道から制作へ転身し、トレンディドラマブームを牽引。以下に主な経歴を時系列でまとめた。
年次 | 役職・出来事 |
---|---|
1981年 | フジテレビ入社(報道局配属)。社会部記者として警視庁キャップを担当。 |
1986年 | 広報局広報部を経て、第一制作部(現・ドラマ制作センター)へ異動。ドラマ制作デビュー。 |
1988年~1990年代 | 「大多班」を率い、トレンディドラマの第一線で活躍。視聴率30%超のヒット作を連発。 |
2002年 | 編成制作局次長に就任。 |
2006年 | 編成制作局ドラマ制作担当局長。映画『アマルフィ 女神の報酬』の企画・プロデュースも手掛ける。 |
2007年 | 執行役員編成制作局ドラマ制作担当局長。 |
2009年 | デジタルコンテンツ局長。YouTube提携やCS初連続ドラマ「ニュース速報は流れた」を制作。 |
2012年 | 常務取締役(編成制作・美術制作担当)。フジ・メディア・ホールディングス取締役。 |
2013年 | 常務取締役(編成制作・映画事業・コンテンツ事業担当)・編成制作局長。 |
2022年 | 専務取締役(編成担当)。 |
2024年6月 | 関西テレビ放送代表取締役社長に就任(フジから転籍)。 |
大多氏の制作スタイルは「若手起用とリアリティ重視」で知られ、フジの月9枠を恋愛ドラマの聖地に変えた。デジタル時代への移行も主導し、国際共同制作ドラマ「THE WINDOW」(ドイツZDFエンタープライズとのコラボ)も手掛けた。
主な功績:トレンディドラマの帝王としてフジ黄金期を築く

大多氏の最大の功績は、トレンディドラマというジャンルを確立し、フジテレビの視聴率を爆発的に伸ばしたこと。1980年代後半から1990年代にかけて、「大多班」と呼ばれるチームを率い、20代女性をターゲットにした都会派恋愛ドラマを量産。視聴率30%超のメガヒットを連発し、フジの「月9」ブランドを確立した。以下に代表作を挙げる。
- 『君の瞳をタイホする!』(1988年):副プロデューサーとしてデビュー。29歳の若さでプロデューサー抜擢。トレンディドラマの先駆けとなり、平均視聴率20%超。
- 『101回目のプロポーズ』(1991年):武田鉄矢主演のラブストーリー。最終回視聴率36.7%を記録し、社会現象に。トレンディドラマの金字塔。
- 『東京ラブストーリー』(1991年):鈴木保奈美・織田裕二主演。平均視聴率22.9%、最終回32.3%。鈴木の「カ~ンチ!」が流行語に。原作をリカ目線で再構築した斬新さがヒット要因。
- 『愛という名のもとに』(1992年):唐沢寿明主演。平均視聴率30.7%。小室哲哉の音楽がドラマを象徴。
- 『ひとつ屋根の下』(1993年):江口洋介主演。家族ドラマの要素を取り入れ、視聴率30%超。
- その他:『抱きしめたい』(1988年、W浅野主演)、『プライド』(2004年、木村拓哉主演)、映画『HERO』(2007年)、『容疑者Xの献身』(2008年)。
これらの作品は、若手俳優のブレイクを促し、フジの売上を支えた。大多氏の座右の銘「音楽とロケーションの融合」は、小室哲哉とのタッグで実現。2011年にはLaLa TVリニューアルをプロデュースし、トレンディドラマの遺産を後世に伝えた。2023年の著書『ヒットマン―テレビで夢を売る男』で制作哲学を語り、ファンから支持を集めている。
私生活とスキャンダル
大多氏の私生活は謎に包まれている。結婚しており、妻は一般人(一部でフジテレビ元アナウンサーとの噂あり)とされるが、名前や詳細は非公表。息子が1人おり、電通にコネ入社したとの報道もあるが、確定情報ではない。家族をメディアから遠ざけ、プライベートを重視するタイプだ。一方、スキャンダルも報じられている。
- 鈴木保奈美との不倫疑惑(1991年頃):『東京ラブストーリー』制作中、当時23歳の鈴木保奈美と密会写真が週刊誌に掲載。既婚者だった大多氏が「保奈美をいとおしく思えた」と自著で記述し、不倫を匂わせる。鈴木のブレイク不安を支える中で関係が発展したとされ、江口洋介との熱愛報道はカモフラージュ疑惑も。当初否定したが、後年半ば認める形に。
- 女性アナ同席の会合(2005年~):第三者委員会報告書で、福山雅治らタレントとの会合に女性アナ19名以上が参加。性的な会話があり、不快感を与えたと指摘。大多氏「認識が甘く、時代遅れだった」と反省。
- 接待文化の中心人物:役員時代に女性社員を伴った食事会を主催。ハラスメント体質の象徴として、後年の問題に繋がった。
これらは、フジの「成功体験」が生んだ企業風土を反映。2025年7月のフジ検証番組で「女性アナは上質なキャバ嬢」との発言が明らかになり、さらなる批判を呼んだ。
中居正広トラブルと辞任の経緯

2025年の最大の出来事は、中居正広氏と元フジ女性アナウンサーとの性暴力問題。大多氏の対応が「二次加害」と認定され、辞任に追い込まれた。
- 経緯:2023年6月、中居氏が女性をマンションに誘い性暴力。社員Aが食事設定に関与した疑い。8月、大多氏(当時専務)が港社長・編成制作局長と協議。「プライベートトラブル」と判断し、コンプライアンス室や外部相談せず、中居氏の番組(『まつもtoなかい』)を継続。新規出演も決定。
- 2024年12月:週刊誌報道で発覚。大多氏は関西テレビ社長就任後だったが、過去の関与が問題化。
- 2025年1月22日:関西テレビ会見で謝罪。メディア開放で透明性をアピールも、「中居を守る意識なし」と釈明。
- 3月31日:第三者委員会報告書公表。「性暴力理解不足」「被害者視点欠如」「二次加害」と厳批。スポンサー63社がCM停止。
- 4月4日:大多氏、関西テレビ社長辞任。「指摘を真摯に受け止め、責任を取る」。女性に直接謝罪意向を表明。福井澄郎会長が社長兼務。
- 6月:フジが大多氏・港氏を提訴準備。善管注意義務違反で損害賠償請求(額未定)。7月検証番組で会合詳細暴露。
報告書は、3人協議のクローズド体制を「思考停止」と批判。企業風土のハラスメント体質が露呈し、広告収入減大。
まとめ:功罪両面の「トレンディの帝王」
大多亮氏は、フジテレビのトレンディドラマ黄金期を築いた英雄だ。『東京ラブストーリー』などの成功は、彼の若手起用とリアリティ追求の賜物。しかし、不倫疑惑や接待文化が、現代のコンプライアンスに合わず、辞任に繋がった。提訴の行方や業界全体の改革が注目される中、大多氏の功績はテレビ史に永遠に残るだろう。一方で、人権意識の教訓としても語り継がれそうだ。フジの未来は、新体制の手腕にかかっている。