台湾在住の日本人YouTuber「ゾロの台湾グルメ」が、高雄市の夜市での発言をきっかけに台湾で大きな批判を集めています。登録者数約14万人の人気チャンネルがなぜ炎上したのか、そして本人がどう釈明したのか、現時点で報じられている事実を整理しました。
「ゾロの台湾グルメ」とはどんなチャンネルか
「ゾロの台湾グルメ」は、台湾在住の堀井裕さんが運営するYouTubeチャンネルです。1979年に大阪で生まれた堀井さんは、中学卒業後にすし店で見習いをして調理師免許を取得し、2010年からオーストラリアでレストランの副料理長を経験。その後6年ほど、ギターの弾き語りをしながら世界65カ国・地域を旅したという経歴を持っています。
2019年11月に台北へ移住し、2020年3月にYouTubeチャンネルを開設しました。「本音で、分かりやすい」をポリシーに掲げ、実際に食べた店を3段階の星評価で紹介するのがチャンネルの特徴です。台北・迪化街では「台湾は奇跡の国」という名前の伴手禮(お土産)店も経営しており、台湾グルメ系YouTuberとして知名度を上げてきました。登録者数は2022年7月時点で3万8300人でしたが、2026年9月時点では約14万人まで増えています。
炎上のきっかけは8月9日公開の動画
騒動のきっかけは、2026年8月9日に公開された「【夏休み特別企画③】もう台湾嫌い!台湾一周するといつも台湾が嫌いになるゾロ。。。笑」というタイトルの動画でした。台湾第二の都市・高雄市にある「六合夜市」を訪れた様子を収めたもので、堀井さんは150台湾ドルの屋台料理「五花肉泡菜捲(豚バラキムチ巻き)」を購入します。
一口食べたところで口から出し、次のような発言を残しました。
- 「なにこれ?もう本当においしくないわ」
- 「キムチもめっちゃ酸っぱいし、アルコール臭い。これ食えないわ。まっず」
- 「もうクソまずかった。ほんま」
- 「金返せぐらいよ」
- 「ほんま夜市嫌い。なんなら台湾嫌い」
この時点では大きな話題にはならなかったようですが、1カ月以上経った9月に台湾のSNS「Threads」を中心に動画が改めて拡散し、状況が一変します。
9月に台湾メディアが一斉に報道
2026年9月21日、動画が台湾のSNSで急速に注目を集め、X上での閲覧数は17万7000回に達したと報じられています。同日、台湾との交流活動に関わってきた神戸市会議員の上畠寛弘さんが中国語で「台湾の友人の善意を利用しながら台湾の食文化を貶めている」とSNSに投稿し、「台湾からすぐに出て行くべきだ」と批判しました。これは政治家個人によるSNS上の発言であり、行政としての公式な対応ではありません。
翌9月22日には、台湾の「三立新聞網」が本件を報道。台湾で店を経営し利益を得ながら、その台湾を「嫌い」と発言したことについて「二重基準ではないか」という現地ネットユーザーの声を紹介しました。あわせて、堀井さんが過去に「旅費が必要」だとして路上で弾き語りをして募金を集めていたとされることや、「台湾人は善良だから1週間で3万台湾ドル稼げる」と発言していたとされることも報じられています。ただし、この発言そのものの一次ソースは確認できておらず、報道内の伝聞情報として受け止める必要があります。
この後、「TVBS」「Newtalk新聞」「民視新聞網」「自由時報」など複数の台湾メディアが相次いで本件を取り上げました。台湾のジャーナリスト・矢板明夫さんは、店の看板や様子が映る状態での酷評が、その店の営業に影響を与える可能性を指摘したと報じられています。ネット上では堀井さんの経営する店への不買運動や、チャンネル登録解除を呼びかける声も広がりました。
9月23日、堀井さん本人が1時間超の釈明動画を公開
批判が広がるなかで、堀井さんは2026年9月23日に「大炎上の件について」と題した1時間を超える動画を公開しました。
動画の中で、堀井さんは食べ物を吐き出した理由について「味に違和感を感じ、食中毒を避けるためだった」と説明しています。一方で、料理そのものへの評価は撤回せず「今も言ったるわ。マジでクソまずいから」と改めて主張しました。また「夜市が嫌い」という発言についても「6年前からずっと言ってる」として、人の多さやおいしい料理の少なさ、臭豆腐の匂いなどを理由に挙げ、以前からの持論だと説明しています。
炎上のきっかけとなった「一部の民度の低い台湾人のみなさまへ」というサムネイルの文言については、「これぐらい強烈なサムネイルにしたら、みんな絶対見てくれると思った」と述べ、注目を集めるための意図的な表現だったと明かしました。
批判コメントへの反論としては、「ちゃんとお金を払ってる」「堂々と動画に撮って顔出ししてやってる」と自らの姿勢を強調し、匿名で批判するコメントを「いじめみたいなことするんや台湾の人って」と表現しました。一方で、批判している台湾の一部を「中国人とやってること一緒」と表現したことも報じられており、この発言がさらに火に油を注ぐ形になったとされています。
なお、堀井さんは問題の動画自体は「一切消していない」と説明しており、2026年9月27日時点でも動画は削除されずに残っています。
台湾人から見ると何が問題だったのか
この騒動について、台湾出身で日本在住の筆者による解説記事では、問題の本質は「この料理がまずい」という感想そのものではなく、「台湾に住み、台湾で商売をしながら台湾そのものを『嫌い』と表現したこと」にあると分析されています。1軒の店の料理を批判することと、「夜市が嫌い」「台湾が嫌い」という国や文化全体を否定するような表現は、受け取られ方が大きく異なるという指摘です。
一方で、台湾国内でも意見は一様ではなく、「料理がおいしくないと言うこと自体は自由なはず」「問題は内容ではなく言い方ではないか」という声もあるようです。単純に「日本人YouTuberが台湾を侮辱した」という構図だけでなく、表現方法や、現地で商売をしている立場との整合性が問われている騒動といえます。
まとめ
「ゾロの台湾グルメ」の炎上は、8月9日に公開された夜市グルメの酷評動画が、1カ月以上経ってから台湾のSNSで再拡散したことに端を発しています。台湾で店を経営しながら「台湾嫌い」と発言したことへの二重基準批判に加え、9月23日の釈明動画で本人が評価を撤回しなかったことや、批判者への反論の言葉選びが、騒動をさらに大きくしました。2026年9月27日時点で動画は削除されておらず、本人からの追加の公式声明も確認できていません。今後、堀井さん本人や所属チャンネルからどのような対応が示されるのか、続報を確認していく必要があります。


