たまに見ませんか?BMWとかベンツのちょっとグレード押さえた感じの車を運転するおばさん。メーカーのネームバリューにそぐわない運転で、そんなんなら軽四にでも乗ればいいのにと思ってしまうことが多々あった。例えば狭い道でこちらが譲ってもすれ違えないくらいの運転スキルだと、ちょっぴりイラッとする。
なんとかやり過ごした後に、デカい車運転するスキルがないのに、その車をチョイスする理由はお金が有り余るから?地位を誇示したいから?などと、すれ違いざまに見えたおばちゃんの引きつった顔と、こちらに会釈すらできない余裕のない様子を思い出しながら色々推測するも、どうでもよくなってすぐに忘れてしまってた。
どうでも良くなる割に、毎度考えてしまうこの疑問を解決するヒントを耳にする出来事があった。
仕事の打ち合わせを兼ねた昼食に誘われて、ランチには少し高めな価格の、豆腐と湯葉料理の専門店に行ったときのこと。駐車場に到着して車から降りたタイミングで、招待してくれたとある会社の社長もベンツで到着した。
自分は、バイクが好きでバイクをチラッと見ただけで排気量・価格などサラッと出てくるのだけど、車に関してはすごく詳しいわけではない。でも、野生の勘ではないが、さすがにパッと見の感覚で高級な車かどうか位はわかる。その「ハイグレードなベンツ」でゆったりと社長は駐車場に現れた。
車から降りた社長に手を振りながら近づき声を掛ける
「お疲れ様です。じっくり近くで見ると車デカいですねー」
「そうかもねぇー。ベンツ乗り継いでるから、慣れてるからわからなくなってきてるけど」
「あぁ、感覚的に普通の大きさに感じるんですねー」
「うん、ウチの(奥さん)にはBM(W)乗らせてるんだわ」
そんな、仕事の会話の前の「掴み」みたいな大した事ない会話だった。
その奥様には、以前に企業の催事でお会いしたことあるので、BMWを優雅に運転する姿が思い浮かんだ。
それから数日後、別の案件で訪問した車屋さん。お店のオーナーとの打ち合わせなのだが、ちょっと緊急の電話で待ちぼうけを食らってた。テーブルが3セットある応対スペースで待っていると、そばにいた年配のオジサマと世間話をしていた。なんでも、地元の某企業の役員らしいのだが、今日は自分の車の車検で来てるとのこと。会話を続けていく中で、なんか気持ちよくなってきたらしく、家族のことも話してくれた。その中で出てきた
「うちのにはレクサス乗らせてる」
なんでも、軽四だとみすぼらしいし、事故にあったら大破しそうだからレクサスを買ってあげたそうだ。
愛する奥様のため、高級車を買ってあげる。
なんとも、平成以前のダンディさと言うかなんというか。年配の女性で高級車に乗っているのは、旦那さんが経営者だったり会社役員だったりの富裕層なんだなって。
車屋さんでの打ち合わせを終えての帰路。
片側2車線の国道を自宅へと車を走らせていた。左車線を自分が走っていると、右車線にやけにこちらに寄ってくる黒いボディが見えた。
「何だこいつ、危ねーな。スマホでもいじってんのか?」
運転席から少し顔を右に向けてその車の方を見ると、直ぐ側にハンドルが。左ハンドルのBMW。どんなやつがだらしない運転してんのか見てやろうと、ドライバーの顔をチラ見。
豆腐専門店で話しした社長の奥さんだった。
ハンドルはキッチリ10時10分。絵に書いたような優良ドライバーの姿勢。
ただ違うのは、明らかに両肩が上がっていて顔つきはターミネーター2の戦闘シーンのサラ・コナーみたいに引きつっていた。
「乗らせてる」
奥様は
「乗らされている」
だった。
毎回、車で出かけるのは映画のクライマックス位の緊張感なのかもしれない。
みんながみんなそうではないだろうけど、「乗らされてる」奥様方は結構多いのかもしれない。
一見、交通状況にストレスを与えてる加害者扱いされがちな「下手くそ高級車BBA」。
本当は「被害者なのかも」。
直接的なものの見方で瞬発力で善悪を決めてしまいそうになることって多いけど、裏側にある事情を知ると、面白いかもしれんです。
この出来事以来、運転の下手な高級車BBAを煙たがるよりも、同情したり不憫に思うことが増えた。(本人が好きで乗ってる可能性もあるが)。最低でも、自分の精神衛生上は良くなった気がする。