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センスを信じるということ。「草彅くん…あれが基準だ…」

コラム・エッセイ
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私は下ネタを安易に使うやつが嫌いだ。誤解のないように言うと、おもしろい下ネタなら笑うのだが、笑いのセンスがなく、下ネタに頼るばかりか下ネタしか言わないやつが嫌いなのだ。

下ネタって、毒舌ネタ、敢えて空気を読まないネタに似てるところがあると思うんです。発する側に相当なセンスがないと、オーディエンスサイドを困らせたり不快にする。
なんなら、受け取る側にまでスキルを要求するところもあったりする。これらが笑いを生み出す理由は何となく分かるんです。

それは、異常な空間を生み出すから。通常ならば「これは言わないほうが良い」ということを発することで、普通じゃない状況を目の当たりにし、驚きに似た笑いが出るのだと思う。

それに気付かされたのは、広告代理店の子会社である出版社の社員だったある日経験した「変な空気感と空間」でした。
その日は、社内の文章作成に携わる社員が本部長の命で会議室に集められた。なんでも、「使用禁止用語・放送禁止用語」などについて、本部長自らお話があるそうな(なんじゃそら)。

その本部長というのは、なんでも50半ばにして元大手広告代理店から中途採用入社したそうで、本社付けて数年勤務。その後、編集部門の本部長に1年前就任した。清潔感あふれるロマンスグレー感たっぷりで、雰囲気だけは仕事ができそうな当時の私にとっていけ好かないタイプではあった。

その「本部長のありがたい講座」は開始されると、まぁ大したことのない話なんですわ。
やれ、放送業界ではいろいろな事情で使っちゃいけない言葉があるだの、私生活では気にしていなくても、文章書く時に気をつけるべき言葉や名詞があるだのそんなお話。

最新 差別語・不快語

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小林 健治
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床屋さんはだめだよ、理髪店だよ。

びっこじゃなく、足の不自由な人。

外人じゃなくて、外国人。

そんな感じで集められた社員は一同に顔が「んなもん、知っとるがな」の顔だった。
空気がちょっとモワッとしたのは、放送禁止用語などがまとめられている辞書のような書籍もあるので、見ておくようにというくだりだった。なんでも、その本には図説にて、やってはいけないジェスチャーも紹介されているらしく、私は心のなかで「あぁ、FU●K YOUとかのあれの類か」と思っていたところ、本部長は手で数字の4を表す形をしながら

「よつ…とかね、書いてあります」

とタブーに触れる自分に後ろめたさを感じてるのか何なのかわからんが、うっすらではあるが確実に笑ってるとわかるニヤニヤとした表情をしていた。ぶっちゃけハラスメント感がすごかった。
その瞬間、会議室はなんとも言えない空気になった。

本部長が表現したのは、その当時のだいたい50代以上にはメジャーな差別的なジェスチャーなのだが、そこに集まった連中は大半が女性の30代までの社員で、感覚としては知らいない国の知らない言葉とジェスチャーを押し付けられた挙げ句、薄気味悪くニヤニヤされた感じに近かったかもしれない。

男の私でさえ、不快に感じるレベル。
そして、「人生で他人が不快感を感じてる場面を目の当たりにしたベストバウト」を挙げろと言われたら、間違いなく5位圏内にこれを入れる。
全くおもしろくないのに、本人だけがニヤニヤするクソみたいな状況の、不快感、異様な空気。
どれをとっても非の打ち所のない、デラックスエディションと言っても過言ではない感じ。
結果、言葉選びの不祥事を防止する講習なのに、「こういうバカにはなっちゃいかんな」という素晴らしい教訓を得ることができました。今も役に立っています。ありがとう本部長。

話を戻すと、タブーをとりあえず言ったり、行うことで誰しもが笑うと思ってるヤツがまぁ多いこと多いこと。他でウケたからココでもウケるだろうっていう安直さがそうさせるのだろう。
お笑い芸人がやることをそのまま真似すれば、手軽に笑いを取れるっていう感覚もそれを後押しするんだろうなぁとも思う。お笑い芸人さんならではの勘や、空気を読む力、タイミングがあってこそ成立するものを手軽にやろうとするから滑る。
そのクセすべったら周りせいにする。そういうヤツ結構いませんか?

反面、情報過多の時代がそういうヤツを増やしてる気もしています。

YoutubeのショートやTikTokのような比較的短めな動画投稿でも、おんなじ曲でおんなじ振り付けやってる動画ばっかりだし、ダンス以外でもとにかく他ユーザーが使ってるバズり系のBGMをとりあえず使ってる動画もめちゃ多い。インプ目当てだから、そんなもんなんでしょうね。とにかく「他でウケてるから使う」「なんとなく流行ってるから流れに乗っておく」って感じ。

自分で探して、判断して決めるがしんどいのかもしれない。

最後に、そういった時代だからこそ紹介したい一節がある。

私は東京ダイナマイトのコントが結構好きだ。

どこが良いのかと聞かれたら、ハチミツ二郎のツッコミの辛辣風でありながらも、妙に温かみのある感じや、ハッとさせられる哲学的なものを感じさせられること。

彼らのコントの中で一番好きなのは「BAR」。
その中のこんな一節…。

松田「…草彅くんってカッコいいすかね?」
ハチミツ「知らねぇよ怒」
松田「あの…草彅くんってカッコいいすかね…?」
ハチミツ「自分で決めるんだよ、そういう事は…。草彅くん…あれが基準だ…」

普通に捉えると草彅くんいじりなんだけど、これって自分で決められない人達へのアンサーになっている気がする。