『西山ダディダディ』は、2024年末から2025年初頭にかけてTikTokを中心に爆発的な人気を博した日本発のダンス動画だ。
六本木の会員制バー「ギフト六本木」のオーナー、西山翔が披露する「西山ダディダディ どすこいわっしょい ピーポーピーポー」というコールと振付が特徴で、海外でもバイラルヒットを記録した。
2025年2月には再生数が数千万回を超え、テレビでも取り上げられたが、ブームは急速に収束。
3月現在、新たな投稿は減り、熱狂は過去のものとなりつつある。『西山ダディダディ』とは何だったのか。
その誕生から流行、衰退、そして残したものを振り返る。
『西山ダディダディ』の誕生と背景
『西山ダディダディ』の起源は、2024年12月に遡る。
東京・六本木にある完全会員制バー「GIFT roppongi」のオーナー、西山翔(通称:ダディ社長)が、客を楽しませるために始めたパフォーマンスが発端だ。
西山は元リクルート社員で、30歳前後に脱サラし、飲食業に転身。バーを盛り上げるため、スタッフと共に奇抜なコール芸を考案した。最初の動画は、客から「1杯飲んでいいよ」と言われた際のお礼として、「西山ダディダディ」と叫びながら踊るものだった。
このダンスの元ネタは、2020年頃にTikTokで流行した「竹内ダディダディ」だ。
一般人・ヒロチョが川辺で即興で披露した「竹内ダディダディ どすこいわっしょい ピーポーピーポー」が、当時バイラルとなり、西山がこれを参考に独自のアレンジを加えた。
胸を張り、両腕をV字型に曲げる振付は、ピコ太郎の「PPAP」に似たリズムネタの要素を持ち、中毒性のあるリズムとコミカルさが特徴だ。
Xでは「竹内ダディダディの進化系」との声が上がった。
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バイラルヒットへの道
『西山ダディダディ』が一気に注目されたのは、2025年1月中旬だ。
きっかけは、フォロワー100万人超の海外TikTokerがこのダンスを投稿したこと。
Googleトレンドによると、1月14日までは無風だったが、1月15日から急上昇し、海外での再生数が跳ね上がった。
「ギフト六本木」の公式TikTokアカウント(@gift_roppongi)は、元動画が3500万再生を記録し、フォロワー数は60万人を超えた。
日本でも反響は大きく、横浜ベイスターズ公式TikTokが「牧秀悟がダディダディ」と投稿するなど、著名人や企業が参戦。
人気ダンスグループ「アバンギャルディ」のnonaも動画を上げ、35万再生を突破した。
Xでは「西山ダディダディが頭から離れない」との投稿が続き、テレビ番組『情報7daysニュースキャスター』(TBS、2025年2月8日放送)で特集されたことで、一般層にも浸透した。
海外での人気は特に顕著で、アメリカや東南アジアのインフルエンサーが真似し、学生から大人までが踊った。訪日外国人が「ギフト六本木」を訪れ、西山と一緒に撮影する姿も見られた。Xでは「日本発のリズムネタが世界を席巻」と驚きの声が上がった。
全盛期の特徴と魅力
2025年1月から2月が『西山ダディダディ』の全盛期だ。この時期、TikTokやInstagramで関連動画が溢れ、独自の文化を形成した。
シンプルで真似しやすい振付
「西山ダディダディ」の振付は、両腕をV字に曲げてリズムに乗る動作から始まり、腕を半回転させたり、ヒップを突き上げたりするもの。シンプルで覚えやすく、特別なダンススキルが不要だった。Xでは「誰でも踊れるのがいい」との声が多かった。この手軽さが、海外での拡散を後押しした。
中毒性のあるコール
「西山ダディダディ どすこいわっしょい ピーポーピーポー」のフレーズは、リズミカルで耳に残る。
日本の相撲文化(どすこいわっしょい)や救急車のサイレン(ピーポーピーポー)を混ぜた奇抜さが、外国人にも新鮮に映った。西山の無表情なダンスとのギャップも笑いを誘い、Xで「中毒性がヤバい」と話題になった。
エンタメ性の高さ
「ギフト六本木」では、他にも「ティラノダンス」や「ググッとコール」など多彩なパフォーマンスが展開され、店全体がエンターテインメント空間に。西山の陽気なキャラクターとスタッフのノリが、視聴者に楽しさを伝えた。Xでは「落ち込んだ時に見ると元気出る」との感想が寄せられた。
衰退の兆しとその理由
2025年2月中旬をピークに、『西山ダディダディ』の勢いは衰え始めた。3月現在、新たな関連動画は減り、話題性も落ち着いた。
飽和とマンネリ化
TikTokの短寿命トレンド特有の現象として、過剰な露出で飽きが来た。同じ振付の繰り返しに「見すぎて不快」との声がXで上がり、国内での新鮮味が失われた。海外でも、次なるトレンド(例:「フラッグトレンド」)に移行する動きが見られた。
経済的課題
「ギフト六本木」への来店客が増えたが、訪日外国人の多くが「踊って帰るだけ」で飲食せず、店側は収益化に苦戦。西山は「どうすれば注文してもらえるか」と悩みを吐露(『情報7days』より)。バズった割にビジネスに繋がらない現実が、勢いを削いだ。
文化のギャップ
日本では「コール芸」が馴染み深いが、海外では一過性のネタとして消費された。深い文化的背景が伝わらず、表面的な流行に終わり、持続性が欠けた。Xでは「海外では一瞬の笑いもの」との指摘もあった。
現在の状況と今後の展望
2025年3月1日現在、『西山ダディダディ』のブームは終息した。「ギフト六本木」のTikTok投稿は減り、フォロワー数は60万人で横ばい。西山は新たなコールを試みるが、かつての再生数は得られていない。Xでは「西山ダディダディも過去のもの」との声が目立つ。
ただし、完全に忘れられたわけではない。横浜ベイスターズのキャンプ配信(2025年2月10日)で選手が口ずさんだように、サブカルチャーとしての余韻は残る。西山自身、SNSを活用した集客を続け、「ギフト六本木」を訪れるファンも細々と存在する。今後は、局地的なエンタメとして定着するか、あるいは新たなバズを狙うか、注目される。
『西山ダディダディ』の爪痕
『西山ダディダディ』が残した影響は小さくない。
まず、日本発のコンテンツが世界に広がる可能性を示した。
ピコ太郎以来の「リズムネタ」成功例として、SNS時代の拡散力を証明。Xでは「日本発のバイラルはまだいける」との声が上がった。
また、個人や中小企業がSNSで注目を集めるモデルケースとなった。西山の元リクルートという経歴と、バー経営での奇抜な発想は、マーケティングの教科書になり得る。一方で、一過性のブームに終わった事実は、持続性の難しさを教訓として残した。Xでは「バズっても儲からない現実」との皮肉も見られた。
まとめ:『西山ダディダディ』の時代と名残
『西山ダディダディ』は、2024年末から2025年初頭にかけて、TikTokで世界を席巻したダンス動画だった。六本木のバーから始まり、シンプルな振付と中毒性のあるコールで一時代を築いたが、2月を境に熱は冷め、3月には過去のトレンドとなった。その短い栄光は、SNS時代の刹那的な流行を象徴する。
『西山ダディダディ』とは、日本発の陽気なネタであり、海外に届いた小さな奇跡であり、そして儚い夢だった。
振り返ると、デジタル時代のエンタメの力と限界がそこにある。興味があれば、「ギフト六本木」のTikTokを覗き、当時の熱狂を垣間見てみるのもいいだろう。