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『ピコ太郎』とは、なんだったのか

〇〇とは、なんだったのか
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『ピコ太郎』は、2016年にYouTubeで爆発的な人気を博した日本のコメディアンキャラクターだ。
お笑い芸人・古坂大魔王(本名:古坂和仁)が演じるこのキャラクターは、「PPAP(Pen-Pineapple-Apple-Pen)」という短い楽曲と奇抜なダンスで世界を席巻した。

動画は公開から2カ月で1億再生を突破し、ジャスティン・ビーバーの称賛で一気にバイラル化。
2016年末には『NHK紅白歌合戦』に出場するなど、日本発のポップカルチャーとして一時代を築いた。

しかし、ブームは2017年を境に急速に収束し、2025年現在、新たな活動はほぼ途絶えている。

『ピコ太郎』とは何だったのか。その誕生から全盛期、衰退、そして残したものを振り返る。

『ピコ太郎』の誕生と背景

『ピコ太郎』は、2016年8月25日にYouTubeに初登場した。
古坂大魔王が自身のチャンネル「Pikotaro」にアップした「PPAP」は、1分足らずの短い動画だった。内容は、サングラスとヒョウ柄の衣装を着たピコ太郎が、「I have a pen」「I have an apple」と歌いながら、ペンと果物を組み合わせるナンセンスなもの。
制作費は千円程度で、千葉県の自宅で撮影された即興ネタだった。

古坂は1973年7月17日生まれ、青森県出身。1990年代からお笑いコンビ「底ぬけAIR-LINE」で活動し、後にピン芸人として音楽ネタを展開。

レゲエ調の「湘南乃風」や「氣志團」をパロディにした芸風で知られていたが、大きなブレイクには至らなかった。『ピコ太郎』は、彼が40代半ばで試みた新たな挑戦だった。
Xでは「古坂の集大成」と後に語られることが多い。

きっかけは、古坂の妻が「ペンとパイナップルを組み合わせたら面白い」と提案したこと。そこに「アップル」を加え、適当なリズムで歌ったのが始まりだ。古坂は「売れるとは思わず、遊びで作った」と後に振り返っている(『AERA』2016年11月号)。このシンプルさが、後に世界的な現象へと発展する土台となった。

バイラルヒットへの道

『ピコ太郎』の爆発は、2016年9月から始まった。8月25日の初投稿は数千再生で止まっていたが、9月28日、ジャスティン・ビーバーが自身のTwitterで「ネットで一番のお気に入り」と紹介。
すると、再生数は急上昇し、10月には1億回を突破。YouTubeの週間再生ランキングで1位となり、ビルボードチャートにもランクインした。

日本でも反響は大きく、テレビ番組がこぞって特集。『めざましテレビ』(フジテレビ)や『スッキリ』(日本テレビ)で取り上げられ、企業CMにも起用された。2016年10月には「PPAP」が世界134カ国で配信され、同年12月31日、『NHK紅白歌合戦』に初出場。
ピコ太郎は「千葉県のご当地スター」としてオリエンタルラジオと共演し、視聴率を押し上げた。Xでは「ピコ太郎が紅白とか信じられない」と驚きの声が溢れた。

ピコ太郎、念願の『紅白』出演でプロデューサー・古坂大魔王と初ツーショット

海外での人気は特に顕著で、アメリカのトークショー『Ellen Show』に出演し、欧州やアジアでもカバーが続出。幼稚園児から大学生までが踊り、企業の公式アカウントがパロディ動画を投稿するほどの熱狂だった。Googleトレンドでは、2016年10月がピークで、「PPAP」は世界的な検索ワードとなった。

全盛期の特徴と魅力

2016年秋から2017年初頭が『ピコ太郎』の全盛期だ。この時期、YouTubeやテレビで関連コンテンツが溢れ、社会現象を形成した。

シンプルで覚えやすい構造

「PPAP」は、歌詞が短く、リズムが単純で、真似しやすい。ペンを手に持つ動作と「ウッ!」の掛け声は、子供でも再現可能だった。この手軽さが、学校や職場での拡散を促した。
Xでは「PPAPは脳にこびりつく」との声が多かった。

ナンセンスなユーモア

「ペンとパイナップルとアップルを組み合わせる」という意味不明さが、逆に笑いを誘った。古坂の無表情なダンスとのギャップが、シュールな魅力を生み、海外でも「日本の奇妙なユーモア」として受け入れられた。Xで「意味不明だけどハマる」との投稿が続いた。

グローバルな広がり

英語ベースの歌詞と普遍的なリズムは、国境を越えた。ジャスティン・ビーバーの後押しに加え、世界中のYouTuberがカバーし、文化的背景を問わず楽しめるコンテンツに。2016年11月、「世界最短曲」としてギネス記録(43秒)に認定され、話題性を増した。

衰退の兆しとその理由

2017年を境に、『ピコ太郎』の勢いは急速に衰えた。2018年以降、新曲や活動は散発的になり、2025年現在はほぼ過去の存在となっている。

一過性のブーム

『PPAP』のシンプルさが強みだった反面、持続性が欠けた。同じネタの繰り返しに飽きが来て、視聴者が次を求めても、新作「I LIKE OJ」や「ビートルズ」は初速ほどの反響を得られなかった。
Xでは「PPAP以外は微妙」との声が上がった。

過剰露出と飽き

テレビやCMでの多用が逆効果となり、「見飽きた」との反応が増えた。2017年の『24時間テレビ』(日本テレビ)出演は感動路線を狙ったが、視聴者からは「無理やり」と批判され、イメージが揺らいだ。
Xで「ピコ太郎は一発屋」との烙印が押された。

古坂の方向転換

古坂自身、ピコ太郎に頼らず音楽プロデュースやタレント活動にシフト。
2020年には娘の誕生を機に家庭を優先し、ピコ太郎の露出を控えた。2024年のインタビュー(『週刊文春』)では、「ピコは一つの通過点」と語り、過去のものとする姿勢を示した。

現在の状況と今後の展望

2025年3月1日現在、『ピコ太郎』の活動はほぼ停止している。公式YouTubeチャンネルの最新動画は2023年で止まり、再生数は数百程度。古坂はラジオ『古坂大魔王のアイドル倶楽部』(ニッポン放送)や、音楽ユニット「ノーナ・リーヴス」の活動に注力。ピコ太郎としての新曲やイベントはなく、Xでは「ピコ太郎どこいった?」との声が散見される。

ただし、完全な忘却には至っていない。2024年のTikTokで「PPAP」が一部再燃し、若者がノスタルジアとして楽しむ動きも。古坂が過去の栄光に頼らず新たな道を模索する中、ピコ太郎が再び脚光を浴びる可能性は低いものの、サブカルチャーとしての名残は残る。

『ピコ太郎』の遺したもの

『ピコ太郎』が残した影響は大きい。まず、日本発のコンテンツが世界に広がる力を示した。YouTube時代のバイラル成功例として、個人でもグローバルヒットを生み出せる証明に。Xでは「ピコ太郎はSNS時代の象徴」との声が上がった。

また、コメディと音楽の融合で、新たなエンタメの形を提示。ナンセンスなユーモアが国境を越える可能性を広げ、後進のクリエイターに影響を与えた。一方で、一発屋の限界も教訓となり、持続的な人気の難しさを浮き彫りにした。Xでは「ピコの成功と失敗が勉強になる」との反応も。

まとめ:『ピコ太郎』の時代と終焉

『ピコ太郎』は、2016年に始まり2017年に終わる、短くも鮮烈な現象だった。古坂大魔王の遊び心から生まれた「PPAP」は、世界を笑わせ、日本発のポップカルチャーとして歴史に名を刻んだ。2025年、その熱は冷めたが、記憶には残る。

『ピコ太郎』とは、奇抜な一瞬の輝きであり、グローバルな夢であり、そして儚いトレンドだった。その歴史を振り返ると、デジタル時代のエンタメの可能性と限界がそこにある。興味があれば、元の「PPAP」を再生し、当時の笑いを味わってみるのもいいだろう。

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