「スカイプ」(Skype)が5月に完全終了へ、マイクロソフトが正式発表した。
2025年5月5日をもって、このサービスは22年間の歴史に幕を閉じる。マイクロソフトは、ユーザーに「Microsoft Teams」への移行を推奨しており、既存のSkypeユーザーはチャット履歴や連絡先をTeamsに引き継ぐか、データをエクスポートする選択肢が与えられている。
「Skype」はかつてインターネット通信の代名詞とも言える存在だった。無料のビデオ通話やチャットで世界中を繋ぎ、個人からビジネスまで多くの場面で使われた。
しかし、近年はZoomやTeamsといった競合に押され、影が薄くなっていた。今回は、「Skype」が何だったのか、その誕生から全盛期、衰退、そして終了に至るまでの軌跡を振り返る。
「Skype」の誕生と基本概要
「Skype」は2003年8月にリリースされたインターネット電話サービスだ。
エストニア出身のヤヌス・フリスとニクラス・ゼンストロームが開発を主導し、同じくエストニアのエンジニアたちが技術を支えた。彼らは以前、ファイル共有ソフト「KaZaA」を手掛けており、そのノウハウを活かしてP2P(ピア・トゥ・ピア)技術を基盤にした通信ツールを構築した。

「Skype」の最大の特徴は、無料で高品質な音声通話とビデオ通話を提供したことだ。
2000年代初頭、国際電話は高額で、一般ユーザーにとって負担が大きかった。
しかし、「Skype」はインターネット接続さえあれば無料で通話が可能で、さらに有料プランでは固定電話や携帯電話への発信も低コストで実現した。
シンプルなデザインと直感的な操作性も、幅広い層に受け入れられた理由だ。
「Skype」の成長と普及
リリースからわずか数年で、「Skype」は爆発的な成長を見せた。2005年には登録ユーザー数が1億人を突破し、インターネット通信の新しい標準として認知された。その背景には、いくつかの要素があった。
P2P技術の革新
「Skype」の初期は、P2P技術が鍵だった。サーバーを介さずユーザー同士が直接データをやり取りする仕組みは、運営コストを抑えつつ安定した通信を可能にした。この技術のおかげで、無料サービスを大規模に展開できた。Xの投稿でも「当時のSkypeは技術的に画期的だった」と懐かしむ声が上がっている。
グローバルなニーズへの対応
2000年代はグローバル化が加速し、国際的なコミュニケーションの需要が高まっていた。「Skype」はそのニーズを満たし、海外にいる家族や友人と無料で話せるツールとして浸透した。留学生や海外赴任中の人々にとって、手軽で経済的な選択肢として重宝された。
大企業による買収

「Skype」の成長は企業にも注目された。2005年、eBayが25億ドルで買収し、さらなる資金を投入したが、期待された成果を上げられなかった。
2011年、マイクロソフトが85億ドルで「Skype」を再買収し、WindowsやOfficeとの統合を進めた。これにより、ビジネス分野での利用も拡大した。
「Skype」の全盛期と多様な用途
「Skype」が最も輝いていたのは、2000年代後半から2010年代前半だ。この時期、個人から企業、教育現場まで、多岐にわたる用途で使われた。
個人での利用
家族や友人とのビデオ通話が「Skype」の主力だった。画面共有機能もあり、遠隔で写真を見せ合ったり、ゲームを楽しんだりする人も多かった。無料で使える点が若者に支持され、「Skypeで友達と徹夜で話した」という思い出は、この世代にとって共通の記憶だろう。
特に日本ではライブ配信の「ニコニコ生放送」でSkypeを利用した俗に言う「Skype凸」が盛んになり、中でも配信者同士で口喧嘩を仕掛ける喧嘩凸も流行した。

ビジネスでの活用
マイクロソフト傘下では、「Skype for Business」が登場し、リモート会議やチーム間の連絡に利用された。無料版でもグループ通話が可能で、小規模なビジネスには十分な機能を提供した。テレワークの先駆けとして、企業での活用が進んだ。
教育や創作活動
教育分野でも「Skype」は活躍した。オンライン語学レッスンや遠隔授業で使われ、低コストで学習機会を広げた。また、クリエイター同士のコラボレーションにも活用され、音楽やデザインの共同作業に役立った。
「Skype」の衰退と競合の台頭
2010年代後半から、「Skype」の勢いは衰え始めた。その原因はいくつかある。
新たな競合の出現
2020年のコロナ禍でリモートワークが急増すると、ZoomやGoogle Meet、Microsoft Teamsが台頭した。これらのツールは使いやすさや大規模会議への対応で「Skype」を超え、特にZoomのシンプルさが人気を集めた。Xでは「ZoomがなければSkypeがまだ主流だったかも」との声もある。

技術的な問題
「Skype」は「動作が重い」「接続が不安定」といった批判が増えた。
P2Pからクラウドベースに移行した後も、ユーザー体験の改善が遅れ、信頼性が低下した。マイクロソフトがTeamsに注力する一方で、「Skype」の開発が後回しになったとの指摘もある。

イメージの変化
マイクロソフト傘下での「Skype」はビジネス寄りの印象が強まり、気軽な個人向けツールとしての魅力が薄れた。個人ユーザーが離れ、ビジネスでもTeamsに取って代わられた。

「Skype」の終了と現在の状況
2025年2月28日、マイクロソフトは「Skype」の終了を正式に発表した。
サービスは5月5日に終了し、ユーザーは「Microsoft Teams」への移行を促されている。

現時点で「Skype」は無料版が細々と提供されているが、「Skype for Business」は2019年に終了し、Teamsへの統合が進められてきた。
最新バージョンではAI機能や背景ぼかしが追加されたが、かつての勢いを取り戻すことはなかった。
Xの反応を見ると、「Skypeが終わるのは寂しい」「今でもたまに使う」という声がある一方、「時代遅れと感じていた」との意見もある。
マイクロソフトはTeamsを今後の通信基盤と位置づけており、「Skype」の完全終了は時間の問題だったと言える。
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「Skype」が残した影響と意義
「Skype」がインターネット通信に与えた影響は大きい。
まず、ビデオ通話を一般に広めた先駆者としての役割がある。
それまで専門機器が必要だったビデオ会議を、誰でも使えるツールにした功績は見逃せない。
この基盤がなければ、ZoomやTeamsの普及も遅れたかもしれない。
また、国際的なコミュニケーションの壁を下げた点も重要だ。
無料で世界を繋ぐ環境は、生活や仕事を変え、リモートワークの基礎を作った。
さらに、P2P技術の実用化は、他の技術分野にも影響を与えた。
まとめ:「Skype」の終焉とその教訓
「Skype」は2003年の登場から2010年代の全盛期を経て、2025年5月の終了を迎える。無料で世界を繋ぎ、多くの人々のコミュニケーションを支えたこのツールは、時代の変化とともに役割を終えた。マイクロソフトの発表により、22年間の歴史が閉じられることが確定した今、その軌跡を振り返る価値がある。
現代ではZoomやTeamsが主流だが、「Skype」が切り開いた道があってこその進化だ。懐かしさとともにその功績を思い出すと、テクノロジーがどれだけ私たちの生活を変えたかが分かる。「Skype」を使ったことがあるなら、その記憶を振り返りつつ、新しいツールとの違いを感じてみるのも一興だろう。